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今話題の合同会社とは?そのメリットとデメリットを考える

仙台からさらに60分ほど走った石巻湾、普段はこれといった事件の無い平和な漁港で、ちょっとしたニュースが話題になりました。「桃浦カキ」というブランド牡蠣の中に、他地区のカキを混ぜ込んで出荷していたのです。この事件で新聞紙面を飾った団体名が「桃浦かき生産者 合同会社」です。

ひょんなことから有名になってしまった「桃浦かき生産者 合同会社」ですが、もともとは、「水産業復興特区」の認定第一号として、2012年に桃浦地区の漁業者15名と水産卸会社により共同で設立された会社です。

最近合同会社の、メリットが、法人化によるステップアップを目指す個人事業主や、起業家予備軍の中でも注目を浴びています。

「合同会社」のメリット・デメリットについて、ネットに諸説あふれています。今回はその妥当性について深堀しつつ、「合同会社」とはそもそも何かについて考えてみます。


何故漁業者が合同会社を設立したのか


もともと漁業組合では、沿岸の住民しか漁業権が得られません。よそ者が入ってくるのを防ぐためです。
ところが、宮城県では、東日本大震災で多くの漁業者が沿岸から内陸に避難したことに伴い、漁業権を失う事態に見舞われました。

そこで、苦肉の策として、沿岸地区を特区と定め、「漁協」ではなく、「合同会社」を設立させて、内陸部の住民にも漁業権を認めたのです。その陰には、漁業の規制緩和を狙う政府の意図も見え隠れし、県の漁協とは何かにつけてつばぜり合いを繰り返しています。

ところで漁業者は、どうして母体として「合同会社」を選んだのでしょうか?それは、設立が「株式会社」よりはるかに容易なだけでなく、会社の運営を民主的にできる点(重要な意思決定が出資者全員の一致によるとされていること)が、一見こうした新しいスキームとは縁遠そうな漁業者にも受け入れられたのでしょう。


グローバル企業が設立する合同会社

聞けばだれもが名前を知っているシリコンバレーのグローバル巨大企業、これらの日本法人がここ数年でいずれも株式会社から合同会社に衣替えしました。

某スマホで名をはせた某企業などは、横浜市の綱島に巨大研究開発拠点の建設を急いでいます。綱島TDC(テクニカル・デベロップメント・センター)と呼ぶらしいですが、何を研究するかは謎のままです(綱島通りの渋滞がますますひどくなるのは間違いなさそうです)。

あっと言わせるような事業展開を進めるには、スピーディーな経営判断が欠かせません。そのためには意思決定がやりやすい合同会社が得策なのです。グローバル企業が、合同会社を日本で設立しているのは、そのためです。


着実に増える合同会社

政府統計によると、日本中には90万社に上る株式会社が登記されています(平成26年度時点)。これに対して、合同会社の数は4万社であり、まだまだ株式会社が圧倒的に主流です。

ただし増加の勢いを見ると、別の側面が伺えます。ここ5年間でその数は3倍まで増えているのです。平成26年1年間の設立数は2万社に達し、株式会社の設立数(約8万社)の1/4にまで迫っています。

合同会社を設立しているのは、グローバル企業だけではありません。ITセキュリティー、人工知能、バイオ・ゲノム、産業用ロボットと知った先進技術をはじめとして、幼児知育・ヘルスケア・ゲームソフト開発のベンチャー企業が、合同会社を母体として設立されています。


-なぜ先進ビジネスで合同会社が増えるのか


最近、アルコールに強いか弱いかを判定する遺伝子検査法を開発したベンチャー企業も、女子大の教授たちが設立した合同会社です。

ベンチャー企業の場合、出資者のコンセンサスを得ながら研究・事業をすすめるのが大前提であり、そのためには株式会社よりも全員一致を原則とする合同会社の方が適しています。

株式会社の場合、大口出資者の発言力は絶大であり、研究者たちは用済みとなったとたんに会社から追放されかねません。そこまでいかなくても、大口出資者と運営方針で対立し、取締役を解任される研究者の話はよく聞きます。全会一致原則の合同会社なら、こうしたリスクを避けることができます。

それに、経営に不慣れな大学のセンセイたちにとっては、合同会社のような「ゆるめのガバナンス」の方が性に合っているのです。


-許可事業

その他、行政による開業許可に絡んで、合同会社の設立が盛んになっています。

デイケアセンターや有料老人ホームなどの介護事業など、法人の設立が事業の許可要件となっている場合に、設立・運営が容易な合同会社が利用されます。

運送業の場合も同様です。最近は、軽貨物委託を事業とする合同会社の設立が増えています。運送業の場合は、個人であってももちろん許可を取得できます。ただし、将来法人化した場合、改めて許可を取り直す(法令試験なども再受験)必要があります。

そうした二度手間を回避するために、最初から合同会社を設立してしまい、許可を取得するのです。ネット配送の急増を背景とした大手運送会社の人手不足もあり、軽貨物ビジネスは引く手あまた、そうした事情が合同会社設立にも影響しているのです。


法人化のメリット-債務返済の有限責任

合同会社のメリットについて、まず法人化によるメリットを、その後に合同会社ならではのメリットを説明します。

個人事業主の場合、融資が返済できなければ、自宅であろうが自家用車であろうが返済に充てなければなりません。株式会社も同様ですが、合同会社も債務が返済できない場合でも、出資者に出資額以上の返済責任は及びません。これを債務返済の有限責任と呼びます。

ただし、「合同会社の場合は、仮に返済できなくなっても、個人資産の処分を迫られることはない」とのコメントをよく見かけますが、現実はそれほど甘くありません。

なぜなら、金融機関が合同会社に融資を実行する場合、少なくとも出資者のうち代表社員に対しては個人保証を求めるからです。金融機関の融資担当から見れば、法人化したからといって、いざというときの融資回収の担保を怠るわけにはいかないのです。

ただし、代表社員以外の出資者には有限責任の原則が保証されるので、安心して出資できます。つまり合同会社設立により、出資を広く集めることができるのです。


-節税のメリット

法人化により、経営者本人に支払う給料を経費として落とすことができます。また、所得が高い場合には、個人事業主に課される高い超過累進税率を回避することができ、節税を図れます。

ちなみにアメリカでは、合同会社に対してはパススルー課税という税金面での優遇制度が適用されますが。日本の場合はこのパススルー課税は導入されていません。つまり、合同会社であれ、株式会社であれ、税金上の条件は全く同じなのです。


合同会社独自のメリット-会社運営の手続きが簡単


(面倒な株式会社の運営手続き)
株式会社の場合は、意思決定の最高機関である株主総会を開催しなければなりません。一口に開催といっても招集通知を作成し、取締役選任や配当決議さらには決算承認などの議案を起案し、その議決結果を議事録に記録しなければなりません。株主総会では、持ち株数に応じて議決権が付与され、議決結果に反映されます。

さらに取締役会や監査役会も設置し、これらを会社法の厳格な内部統制ルールに基づき、厳格に会社運営しなければなりません。

こうした手続きを専門用語で「会社機関の設計」と呼びますが、本当に手間がかかります。

更に経理面での負荷も無視できません。株式会社の場合は、決算結果を官報に掲載(これを「決算公告」と呼びます)しなければなりません。加えて、資本金が5億円を超えると、公認会計士の監査も義務付けられます。

(合同会社による手続きの簡素化)
合同会社なら、こうした面倒な機関設計を排除できます。意思決定のやり方も、出資比率による多数決にこだわる必要はありません。

その反面、組織内の意思決定ルールが明確に定められていないので、責任の所在があいまいに陥る可能性があります。

(合同会社のメリットを享受できるケース)
日本の子会社の場合、大手企業の完全子会社(親会社が出資割合100%株を持つ会社)のほとんどは、株式会社として設立されてきました。

そもそも完全子会社の場合、重要な経営判断は唯一の出資者である親会社が決定します。株式総会も実際には開催されません。取締役会や監査役会も、メンバーは親会社の出向社員で占められ、実質的には機能していません。それでも会社法により、形ばかりの手続きをとり、議事録などを残さなければなりません。

合同会社なら、こうした面倒な「会社機関の設計」手続きから解放されます。

同様に個人事業主がステップアップとして法人化する場合も、個人事業主が唯一の出資者なら同じことが言えます。


-利益の分配を自由に決められる

株式会社の場合、毎年の利益は出資の比率によって分配されます。ビジネスモデル確立に寄与した創立時メンバーや、イノベーションに寄与した研究者も、出資比率が低ければ分配される利益も少なくなってしまいます。

一方で合同会社の場合は、分配比率の決め方は自由であり、「イノベーションに貢献した度合いによってに多く報いる」といった運用も可能です。


-設立コストの安さ


株式会社の場合、定款を作ったら公証役場に持ち込んで認証してもらわなくてはいけません。この認証に約5万円かかります。一方、合同会社の場合は認証が不要です。

また、登録免許税は、株式会社が最低でも15万円かかるのに対し、合同会社の場合は6万円で済みます。

その他、司法書士への報酬や印紙税をひっくるめると、株式会社の設立には30万円ほどかかるのに対し、合同会社の場合には半分の15万円ほどに抑えられます。


最後に-株式を発行できないのが最大のデメリット

合同会社の最大のデメリット、それは「株式を発行できない」ことです。
株式は、そもそも不特定多数の投資家から出資を募るために発行されます。つまり、合同会社の場合は、広く投資家から出資を募るといったことができないのです。このデメリットが実質的に影響するのがIPO(Initial Public Offering株式公開)です。合同会社のままでは上場できませんし、それまで会社に貢献してくれた従業員に株式を分配することもできません。

とはいうものの、90万社もある株式会社のうち上場できる会社は1%にも達しません。「そこまで考えていない」という個人事業主や株式会社オーナーの方には、合同会社の設立は魅力ある選択肢です。


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ライター紹介

by マネーの神様編集部

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ファイナンシャルプランナー、不動産投資家、起業家、トレーダー、ネットビジネス会社経営者、行政書士等が集まる、ちょっと不思議で多くの面白い情報が飛び交う編集部です。

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