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保険の生前贈与による相続対策は本当に有効か?

みなさんは、相続税のことを気にしたことがありますか?「はい」と答えたあなたは、10人に1人の幸せ者です。毎年全国で亡くなられる方は130万人近く、そのうち相続税の課税対象者は僅か10万人、8.8%しかいないのです。

われわれ庶民にとって、相続税は無縁の存在です。ところがお金持ちにとっては、そうではありません。あの手この手で節税対策を考えます。

その中でも頻繁に使われるのが保険の生前贈与です。本当に有効なのでしょうか?今回は保険を使った相続対策の実態や節税メリットについて解説します。

お金持ちの方には、少しでも役立つ情報をお届けしたいと思います。そうでない方も、トリビアネタを面白おかしく紹介するので、ぜひお楽しみください。


なぜ相続対策が盛り上がるのか?


保険金や生前贈与を活用した相続対策は、経済系一般紙でも特集としてしばしば取り上げられてます。こうした雑誌の読者は比較的裕福な層です。気にして当然といえば当然ですが、最近は相続対策への関心が以前にも増して高まっているようです。

理由は、相続税の強化です。重要な強化ポイントは3点、基礎控除額の引き下げと税率アップ、海外への課税逃れ封じです。

(基礎控除)
「遺産がそんなに多くなければ、相続税は納めなくて構いませんよ」という制度です。この制度のおかげで、われわれ庶民は相続税と無縁でいられるのです。それが平成27年の改正で4割引き下げられたのです。

例えば、奥さんとお子さん2人で遺産相続した場合、平成26年までの基礎控除額は、
5000万円+1000万円×3人(奥さん+お子さん2人)=8000万円でした。
つまり遺産総額が8000万円までは相続税がかからなかったのです。

これが平成27年からは3000万円+600万円×3人=4800万円にまで引き下げられました。つまり4800万円を超える部分に対し相続税が課されるようになったのです。

仮に遺産総額が9000万円とすると、平成26年まで課税されるのは9000万円-8000万円=1000万円で済んだのです。それが平成27年からは9000万円-4800万円=5200万円と、なんと5.2倍に増えてしまうのです。

(税率)
税率も上がります。今までの最高税率は遺産総額3億円に対して50%でしたが、平成27年からは55%に引き上げられました。

(海外への課税逃れ封じ)
昔から富裕層は、税務署の目が届きにくい海外、とくにオフショアと呼ばれる自由な金融取引が認められ、税金もかからないタックスヘイブン諸国で資産を運用してきました。

こうした課税逃れに対し、ここ数年税務署は矢継ぎ早に対策を打っています。平成28年からは、海外に5000万円以上の海外資産を有する資産家は、税務署への報告義務が課されました。

税務署は、海外税務当局からの情報収集も強化しています。先進国に限られますが、2018年度からは各国の口座情報をお互いに報告しあう自動情報交換制度がスタートします。この制度により、いままで資産家が海外に隠していた預金情報がガラス張りになると言われています。

(相続税強化に進路転換した税務署)
平成になって以来、相続税率はずっと緩和されてきました。昭和63年には最高税率75%だったのが、税制改正のたびに引き下げられ、平成15年には50%にまで落ち込みました。この間に基礎控除額も引き上げられます。

こうした緩和の影響で、ピークの平成4年には3兆円近くあった相続税収が半分近くまで落ち込んでいます。

しかし国の借金が1千兆円を超える中、これ以上の税収減は容認できません。富裕層と貧困層との格差も社会問題になっています。そこで富の再分配を求める世論も追い風に、税務署は相続税収確保に舵を切ったのです。


生命保険金の非課税枠とは?節税メリットとは?

(非課税枠は貯蓄の奨励のため)
こうした税務署の攻勢に、お金持ちも防戦に必死です。最もよく使われる相続対策が生命保険金等の非課税枠です。これは一体どんな仕組みなのでしょう?

制度の歴史は古く、1938年に遡ります。当時は社会保障制度の整備もとても充分とは言えず、大黒柱が亡くなったら家族は離散する、というのが当たり前でした。そんな状況を少しでも改善し家族が安心して暮らせるよう、政府は保険への加入を奨励します。その一環が生命保険金の非課税制度で、当時の限度額は5千円でした。

加えて、当時は庶民の蓄えは少なく、政府は保険への加入を通じた長期の貯蓄を促します。

その後、非課税限度額は徐々に引き上げられ、昭和63年の税制改正で、現在の限度額(法定相続人1人当たり500万円)となったのです。

(いくら節税できるのか?)
奥さんやお子さんなど、遺産相続の権利がある親族を、法律用語で法定相続人と呼びます。税務署は法定相続人1人当たり500万円までの非課税枠を認めています。

例えば法定相続人が奥さんと子供3人の計4人の場合、生命保険金等の非課税限度額は500万円×4人=2000万円です。

それでは、このメリットを利用して、どのくらい節税できるでしょうか?
4億円の遺産相続を受け、法定相続人4人で分配(1人1億円)した場合の相続税額でシミュレーションします。

ケースA:保険金の非課税の適用を受けない
(1億円×30%-700万円)×4人=9200万円

ケースB:保険金の非課税(2000万円)の適用を受ける
((1億円-非課税枠2000万円/4人)×30%-700万円)×4人=3億8000万円(1人当たり9500万円)=8600万円

ケースA-ケースB=600万円も節税できます。これは大きな金額です。「4億円も遺産があるのなら、600万円なんて誤差じゃない?」そんなことを思っているあなた、お金持ちにはなれませんよ!お金持ちはお金にシビアだからこそお金持ちなのです。


節税メリットを受けることができない場合


(受取人が相続人でない場合)
地方で一人暮らしのAさん、お子さんたちは東京で暮らしていて、近くに住む妹さんが身の回りの世話をしていました。大変感謝したAさん、お礼にご自身を被保険者、妹さんを受取人とした生命保険契約に加入します。

やがてAさんが亡くなり、妹さんは保険金を受け取りました。この場合、妹さんは保険金の非課税の適用を受けることができません。なぜなら妹さんは相続人でないからです。

(受取人が相続を放棄した場合)
Bさんのお父さんが亡くなり、法定相続人であるお母さんとお子さん1人に遺産が残されました。年老いた母親を気遣い、Bさんは相続権を放棄します。ただし、お父さんはBさんを受取人とする死亡保険に加入していたのです。この場合、Bさんは相続を放棄したため、非課税の適用を受けることができません。

(病気やけがで支払われた保険金)
Cさんのお父さんは、自宅の階段で転び入院します。その後退院しますが、持病の心臓病が悪化して亡くなります。お父さんは医療保険に入っていたので、入院費・療養給付金が保険で支払われましたが、お父さんの死亡後だったのでCさんが受取りました。

非課税の対象となるのは、あくまで死亡により支払われる保険金で、病気やけがで支払われた保険金は、死因に直接関係がない限り対象外です。

同じ理由で、お父さんが加入していた個人年金保険について、残保証期間分(保証期間80歳までの契約に加入していて75歳で死亡した場合)の年金を一括で受け取った場合も、非課税の対象外です。

(故人が保険料を負担していない保険金)
Cさんは、お父さんの死亡に伴い、死亡保険金を受け取りました。この保険を契約したのはお父さんですが、保険料はお兄さんとCさんで半分ずつ負担していました。

この場合は、お父さんが保険料を負担していないので、そもそも相続税の対象とはなりません。保険金のうち半分はお兄さんからの贈与として贈与税の、残り半分はCさん自身の収入として所得税の課税対象となります。


相続対策に使える保険金

保険金は、そもそも相続財産ではありません。

ただし、相続税法では保険金をみなし相続財産として課税しています。そうしないと、保険を利用した課税逃れが横行するからです。

保険金は、相続財産のようにきっちり分ける必要はありません。例えば、相続人が奥さんと子供2人の場合、奥さんの取り分は1/2、子供たちは1/4です。不動産や現預金は、この取り分に基づいて分割しなければなりません。

こうした保険金の特徴を利用して、同居してくれた長男だけに多目に財産を引き継がせたり、相続人以外を受取人として生前の恩義に報いることもできます。


終身保険は保険料が高い


生命保険は、保証期間が一定年齢までか死ぬまでかによって大きく二つの種類に分かれます。

(定期保険)
最もベーシックで、多くの一般家庭が加入している保険です。例えば子供が独り立ちするまで、またはご自身が定年を迎えるまでの時期を意識して、保証期間(保険金が支払われる期間)を一定年齢(一般的には60歳)までとするタイプの保険です。

解約又は満期を迎えた時に戻ってくるお金は、ゼロないしごくわずかです。貯蓄機能は殆ど期待できず、保証のみに絞った保険です。

(終身保険)
保証期間を終身、つまり死ぬまでとする保険です。たとえ100歳で亡くなっても保険金は支払われます。また、途中で解約した場合にも、60歳を超えていれば返戻率は100%以上(つまり利息が付いて返ってくる)に達します。返戻率は若いときに加入するほど高くなりますが、30歳加入(男性)で110%前後です。

(終身保険の保険料はなぜ高いのか)
非課税の恩恵は、定期保険でも終身保険でも受けることができます。ただし、相続対策として使われるのはもっぱら終身保険です。ただし、終身保険のネックは保険料です。返戻率にもよりますが、同じ保険金500万円の場合、定期保険の保険料払い込み総額は75万円前後、終身保険は5倍以上の375万円です。なぜこれほど開きがあるのでしょう。

保険とはなんでしょう?一言でいえば「まさかの時に備えた相互補助」です。多くの人々でお金を出し合い、家が流された・事故を起こした・病気になったなどなど、「まさか」の不幸に見舞われた人を救済するのが保険です。

平均寿命前後での死去は、殆ど「まさか」とは言えません。だから保険料が高いのです。


最後に-曲がり角に来た保険を使った相続対策

税務署公表の統計(平成25年)によれば、相続税の課税対象となった故人5.4万人のうち、保険金を財産として残した人は1.4万人(3人に1人)です。その総額は4100億円、1人あたり3000万円に達します。

一方、低金利による運用難で、多くの保険会社が終身保険金の保険料を値上げ、最悪の場合は販売を停止しています。

非課税制度そのものの存在意義も問われています。そもそも社会保障も整備され、さらに貯蓄を奨励する時代でもなくなり、制度を存続すべきでしょうか?

つまり保険を活用したこの節税策は、曲がり角に来ているのです。


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ライター紹介

小野みさ代

小野みさ代

株式会社One's Brain 代表
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